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良医とは? 

  今年、社会の注目を集めた2件の医療に関する大きなニュースがありました。一つは、春の富山県射水(いみず)市の射水市民病院の伊藤雅之医師の人工呼吸器の取り外しによる尊厳死の問題、二つめは宇和島徳洲会の万波誠医師の腎臓移植の問題です。
 この2件のニュースに共通するのは、どちらも事件として取り上げられた経緯が患者さんの訴えによる物ではない事です。ニュースでは学会や行政等から様々な非難が寄せられマスコミも二人の医師を悪人のごとく扱っていますが、不思議なことに患者さんは二人の医師をとても尊敬し、良い先生と評価しています。この大きなギャップはどこから生まれてくるのでしょうか?私は、この二人の先生方は臨床の現場でできる限りの技術と熱意で患者さんの治療に当たっている私の理想とする臨床医の姿だと思います。目の前の患者さんを自分の家族のように思い、熟慮の末、患者さんのためにできる最善の処置が人工呼吸器の取り外しであり、腎臓移植だったのです。結果がどうであれ患者さんやその家族は最善を尽くしてくれた先生に感謝こそすれ、非難することなどあり得ません。それが、医療の現場での医師と患者の信頼関係だと思うのです。
 しかし、学会を取り仕切る大学の教授や医療行政を司る厚労省の官僚は、同じ医療界にいながら医療の実際の現場を経験し、医師と患者の信頼関係を体験したことがないので、同意書だの倫理委員会だのと書類や会議、規則を重視し、医療の本質を忘れてしまっているのです。医学部の教授というと、さも手術が上手とかすごい治療ができると思いがちですが、実際の教授の仕事のうち診療に当てる時間は多くて30%がよいところでしょう。教育や研究、そして会議と臨床とは何も関係ないことが仕事の多くを占めているのが実際です。また、現在の医学部や歯学部の教授選考の方法では、研究重視、論文重視ですから、患者さんを沢山診察し、診療技術を向上させていては、とても研究する時間もなく教授になれるわけはありません。ですから、本当の臨床の現場、患者さんの気持ち、医師と患者との信頼関係が分かっている人材が大学病院や学会には大変少ないのが現状なのです。
 マスコミは大学教授の肩書きや学会、行政の権威に頼り医療問題を評価しようとしていますが本当にそれでよいのでしょうか?そんなことで国民が本当に良い医療をうけられるようになりますか?日本の社会が伊藤先生や万波先生のような医師を失っても良いのですか?本当の良医とは、大学の教授のような権威のある医師なのか、それとも権威や肩書きはなくとも常に患者さんの側にいて、患者さんと共に病魔に立ち向かう医師なのかどちらでしょう。
 これを決めるのは、医師ではなく患者さんです。皆さんがこのことを真剣に考えこれからの日本の医療をどうして行くのかよく考え、行動を起こす必要があるのではないでしょうか?
 でも、私は最後までいつも患者さんと力を合わせ病気に立ち向かう臨床医でいたいと思います。
 

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