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知識(knowledge)と技術(technique) 

 人類社会の発展は、知識と技術と技術によりもたらされました。知識と技術が一体となることで、画期的な製品が生み出され、快適な現代社会が実現されてきたわけです。知識と技術どちらが欠けても社会を発展させることは出来ません。例えば物作りを考えてみてください。多くの知識あり独創的な発想が出来たとしても、その発想を現実の物として形にする技術が無くては、所詮、机上の空論となってしまいます。反対にいくら優れた技術を持っていても、多くの知識と優れた発想がなければ、従来と同じ物を作り続けるだけで新製品は出来ません。このように知識と技術は社会の発展のための車の両輪なのです。
 ところが現代社会に於いては、知識に対する評価に比べ技術に対する評価が低いように思えてなりません。例えば、給与水準についてみても技術が以後との中心である製造業の給与平均に比べ、知識集約型の仕事の代表である金融業の給与水準ははるかに高くなっています。また、物作りで人間国宝と言われるような職人の生涯賃金も、今はやりのIT企業の経営者(例えばホリエモンのような)に比べ、比較にならないくらい低いのが現実です。製造業を中心とした、物作りで先進国となった日本で、こんなに技術に対する評価が低くていいのでしょうか?
 技術の習得には、多くの無駄と犠牲が伴います。例えば、大工の技術の習得には多くの木を切ったり、削ったりと言う練習のために消費されてしまう材料の無駄が必要です。また、私達の医療の分野でも治療技術が重要な要素をしめる外科系の分野では、練習のための犠牲と言っては失礼になりますが、未熟な技術の治療を受けて下さる患者さんの犠牲があってこそ、技術が習得できていくのです。これに対して、知識が重要な要素をしめる法律、経済、金融と言った部門では、知識の習得に時間と努力は必要かも知れませんが、無駄とか犠牲は必要にしません。同様に医療の分野でも診断学が中心の内科系分野では、一人前になるために患者さんの犠牲と必要とすることは外科系に比べ非常に少なくなります。そして、技術の習得には知識の習得以上に長い時間を必要とします。
 しかし、長い時間と努力そして多くの無駄と犠牲のおかげで収得した技術の社会の評価は、知識の評価に比べ大変低いのが現実です。そうした知識偏重社会の歪みが日本を衰退させていきそうで心配です。先日のクリニック移転の工事でも本当の技術を持った職人さんが居ないために、満足な物が出来ず工事のやり直しが多く大変でした。評価が低いために技術を極めようとする若い人が少なく、プライドを持った真の職人が減っていっているのです。今では一流の職人さんでさえ、その収入の少なさから自分の子供にその職を継がせようとする人は少ないのです。
 技術軽視、知識偏重の風潮がこれ以上社会に浸透すれば、製造業を中心として発展してきた日本が今後どうなっていくのか心配です。製造業からサービス業へ、第二次産業を中心とした社会からから第三次産業を中心とした社会へと社会の成熟過程だという人もいますが、社会の発展は、物作り無くしてはあり得ません。人間はバーチャルな世界でなく、リアルな世界で生きているのですから、現実の形ある”物”が必要なのです。ですから、これからも世界の中で日本が先進国としてその地位を保っていくためにも、現実としての”物作り”を中心とした社会こそが、日本が目指す社会だと思えてなりません。それにはまず、日本社会が技術者や職人をもっと高く評価する必要があるのでは無いでしょうか。

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